ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

文芸誌ユリイカで佳作を頂きました。

村崎カイロです。 青土社の文芸誌ユリイカに毎月、ポエムを投稿しているハガキ職人です(笑)。 一年間読者コーナーにハガキを送り続けて、初めて名前だけ掲載されました。 ここに至るまでの苦節があって 実は去年一年間、全く鳴かず飛ばずでいっそ投稿やめ…

蟻の話(短編小説「海蟻」跋文)

蟻の巣の奥底には女王蟻がいる。働き蟻たちは女王蟻と子供の蟻たちのために働いている。 僕はこの話から蟻の王国のようなものを想像していた。 女王蟻は赤いビロードのソファにもたれかかって、毛皮の常套に身を包んでいると思っていた。 蟻の王国は女王のた…

わたしのことば(現代詩「腹が減る」跋文)

私の中は空っぽで 才能もないし興趣もないし 愛嬌もないし それに加えて主張もない 物を書くという習性だけが残っていて 今もこうして空っぽな言葉を書いている そういった空虚さで この文を読む方のお時間を 頂戴してしまうことは 心苦しいことなのだけど …

海洋性の昆虫について(「深海キリギリス」推敲ノート)

生命は海から生まれた。 動物も植物も。 海から生まれた生き物たちは進化の過程で陸上に上がり、再び海に帰ったものもいる。 ウミヘビやウミガメなどの爬虫類。 クジラやイルカなどの哺乳類。 そのようにして海には沢山の生き物が暮らしている。 だが海には…

第三の選択肢(短編小説殺人するか心中するか其れが問題だ跋文)

選択肢があるということ。 昼食を食べようと食堂に入った。 ランチを注文しようとするとAランチとBランチがあるようだ。 AとB、どちらにしようかと迷う。 AとBのどちらかで迷っている人は気付いていないが本当は選択肢はもっと沢山ある。 ランチ以外のメニ…

細胞膜に身を包むということ(現代詩エンベローブ跋文)

ウイルスはタンパク質から作られた膜を持つエンベロープウイルスと、膜を持たないノンエンベロープウイルスがいる。 アルコールはエンベロープタイプの皮膜を溶かすので不活性化に効果があり、ノンエンベロープのウイルスには影響を与えないと言われる。 ノ…

恐怖についての雑感(伝承異聞 自動車跋文)

怪談を読みながら、一体恐怖の正体はなんだろうと考える。 例えば一人で車に乗っていて、ふと気付くと助手席に誰か乗っている。そんな目にあえば怖いことだろう。 これは何処からが怖いんだろう? 車の運転は怖くない。 助手席に見知らぬ「物」があっても多…

短編小説「ルーム」作品解説

短編小説「ルーム」を読まれた方は意味が分かりくくてモヤモヤするかと思いますので、ネタバレを書きます。 全くもって蛇足です。 書く人が解釈を読者に預けられずに、自ら冗長に語ることって良くないことと思いますが、 この小説を読む人は世界中で10人いる…

猫と翼について(猫だって翼があれば飛べる跋文)

猫と翼について 翼のある猫の写真を見たことがある。およそ飛べそうな翼ではなかったが。 もしかしたらフェイク写真だったかもしれない。 黒い猫だった。 そう言えば「虎に翼」なんて諺もあった。 意味合いは「強くなり過ぎる」。 虎のために翼を作ることな…

私性と俳句(俳句日記「初詣」跋文)

「初詣 僕たちは同じものを見ている」 「私」が詠まれる俳句はあまりないように思われる。 (冷たい)などの感覚や(うれし)などの感情は詠まれる。 だが、私や僕など一人称を使う俳句はない。 俳句の視点がそもそも「私」を中心に展開しているからで、それ…

カッパドキア(短編小説 岩窟の村跋文)

穴居人たちがカッパドキアに暮らしていた。穴居人などと呼べば如何にも非文明的な響きだが、今やカッパドキアの穴居生活はインフラが整備されて現代的なモダン・ライフである。 カッパドキアは砂岩の織りなす地形で、長い年月をかけて風が岩を削り奇岩が目立…

人を愛するということ(愛を与ふるロボット跋文)

僕には人を愛するという感覚が欠落している、気がする。 他人に興味がない、とも言える。 その癖、自分は愛されたいと願っている。 愛というものは恐らく相互のものなので、多少なりとも人を愛することをしなければ、自分が愛される筈もないので、この性格に…