死者との邂逅(夜のプールと古代生物 跋文)
死んだ祖父に会った時、思ったよりも活き活きしていて僕は「なんだ」と間の抜けた感想を持った。「なんだ」が何を意味するのか、世の中のモラルに照らし合わせて説明できる自信がないので詳細は割愛する。
ともあれ病院で死亡診断の済んだ死体に僕は面会したのだ。10年も昔のことである。
「死んでいても良いから会いたい」という感傷を理解したのもそのときであった。尤も「会いたい」という程、強い気持ちではない。生前と同じく、「そちらが会いたいなら会っても良い」くらいが正しい。
時間とともにこの気持ちは少しだけ変化して今は「少しなら会いたい」に変わった。
恋人が死んだ時なら尚更であろう。
冥界に死んだ恋人に会いに行くのはオルフェの物語、それにイザナミイザナギの物語。
古来より受け継がれた正直でロマンチックな願望なのだろう。
短編小説「夜のプールと古代生物」|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/n/n90580fbc412b