ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

凶暴〜庭に咲く小さな花の正体

「僕のフィールドノート 庭草の話」 ■序文 我が家の庭に名も知らぬちひさき花が咲く。 真っ直ぐと細き茎が立ち風に揺れる。その先端が五つ六つに分かれて其々に白き花が咲いた。夏になる前に花の季節を迎えて、それは初夏の風に涼し気に揺れた。夏になって花…

サツキとツツジ

歳時記を見ても「さつき」「つつじ」が見当たらない。 旬を先取りするのが俳句の粋である。遅れた季語は野暮ったい。 この5月なら初夏の句を爽やかに詠みたい。それが晩春じゃいけない。無粋である。 改めて調べてみると歳時記では表記が違う。 「さつき=杜…

ユリイカ201805号「今月の作品」で佳作を頂いたこと

ハガキ職人の村崎です(笑) すっかりブログはご無沙汰になっておりました。詩と評論の文芸誌「ユリイカ」の「今月の作品」に毎月投稿をしております。 この度、投稿した詩に佳作を頂きました。ありがたいことです。選者をしておられる水無田気流先生に拙作…

ベニカタバミの塊根について

こんにちは、詩人の村崎です。 今日は我が家のお庭の話です。 この記事を書いた後にも少し調べ物をしまして理解が深まったので追記しております。 (初出20180331 追記20180331) --------- 新居に移り初めての春である。 庭の雑草を抜いているが、小さな三…

褒めるテクニック

日本の皆さんコンニチハ。 現代詩人(笑)の村崎です。 年度末って忙しいですねえ。 皆様、お疲れ様でございます。 さて、私はといえば 「褒めること」をテーマに掌編小説を書こうと思っておりましたが、スランプの真っ最中で一向に形になりません。 小説にす…

ビーチコーミング、ボトルディギング

ビーチコーミングの話。 子供の頃から、地面ばかり見て歩く子だった。なんら比喩ではなくて。 だから落ちている小銭をよく拾った。 昔は小銭がたくさん落ちていた。 と、さも現代はお金が落ちていないように感じるのは私が地面を見て歩かなくなったからだ。 …

名前のない死体たち(現代詩「ジョン・ドウ・スタア」跋文)

生きる死体。 は生きているのか。 最近は本当に死体が元気な場合がある。ジョージ・A・ロメロ監督(2017年他界)のゾンビシリーズだ。若い人にはテレビドラマのウォーキング・デッドの方がお馴染みか。 (ゾンビ)という存在が時々社会現象となるのは、我々…

クレオパトラの夢 バド・パウエルと高瀬アキ

ピアノとウッドベース、ドラムのトリオ。なんてスリリングな編成だろう。 バド・パウエルのクレオパトラの夢に因んだ短編小説を書くにあたって、クレジットを確認した時の感想だ。 だってスモークが立ち込める薄暗いバーのステージにピアノとウッドベースと…

金子兜太氏のご冥福をお祈り致します

人体冷えて東北白い花盛り 句集「蜿蜿」金子兜太1968年 金子兜太氏がご逝去されました。 浅学の私は先日、宗左近先生の著した現代俳句の入門書を読み、改めて俳句の素晴らしさに感じ入っていた所でした。 その書にはやはり金子兜太の句が紹介されており、そ…

チャーハン大賞に応募しました!

こんにちは村崎です。 先日の記事「チャーハン大賞に応募しようとして辞めました」では 温かいお言葉の数々ありがとうございました。 チャーハン大賞は「AJINOMOTO」社が満を持して売り出す新商品「ザ・チャーハン」の発売記念イベントです。 noteのアカウン…

チャーハン大賞に応募しようとして辞めた話。

こんにちは村崎です。 本文は「味の素 チャーハン大賞」に応募しようと思い起稿したものです。 文章は完成しましたが、なんかアレなので応募を辞めました。そう、なんかアレなんです。 応募はしませんが勿体無いのでブログにアップして供養とします。 お暇な…

経験とことば(俳句日記「かはうそ祭」跋文)

経験を言葉に変える、という話。 「すべては語られてしまった。」 フランスヌーベルバーグの騎手ジャン=リュック・ゴダールの言葉である。 すべては語られてしまった。 本当に誰も知らない物語なんて最早ない。創れない。 俳句という十七文字文学においても…

石手寺マントラ洞(短編小説「やまびこ」跋文)

10年ほど前の話。 かの有名な「マッチ箱」のような路面電車を乗り継ぎ市内循環から外れて行き着く終着駅は道後温泉である。 土産物屋が並ぶ温泉街の入り口を過ぎて山裾を歩くと程なくして真言宗八十八箇所霊場の石手寺に辿り着く。 山門をくぐると50メートル…

現代詩入門

現代詩入門「現代詩ってなんですか?」 詩と現代詩 形骸からの脱却と現代芸術 現代詩とは 吉本隆明「ぼくが罪を忘れないうちに」 おわりに 1.「詩と現代詩」 先日「現代詩」とはなんですか、とご質問を頂きました。 他にも「詩」と「現代詩」は違いますか? …

エフェメラ、砂上の楼閣、バベルの図書館(現代詩「ひさかたの」跋文)

記憶の箪笥を開けると片隅からエフェメラという言葉が出てきた。 言葉を手に取って眺めるのだが、何処で拾ってきた言葉なのか皆目見当がつかない。つかないながら言葉の持つ神秘的な響きが気になって辞典をひいた。 言葉の起源を探ると「一日しか存在し得な…

文芸誌ユリイカで佳作を頂きました。

村崎カイロです。 青土社の文芸誌ユリイカに毎月、ポエムを投稿しているハガキ職人です(笑)。 一年間読者コーナーにハガキを送り続けて、初めて名前だけ掲載されました。 ここに至るまでの苦節があって 実は去年一年間、全く鳴かず飛ばずでいっそ投稿やめ…

蟻の話(短編小説「海蟻」跋文)

蟻の巣の奥底には女王蟻がいる。働き蟻たちは女王蟻と子供の蟻たちのために働いている。 僕はこの話から蟻の王国のようなものを想像していた。 女王蟻は赤いビロードのソファにもたれかかって、毛皮の常套に身を包んでいると思っていた。 蟻の王国は女王のた…

わたしのことば(現代詩「腹が減る」跋文)

私の中は空っぽで 才能もないし興趣もないし 愛嬌もないし それに加えて主張もない 物を書くという習性だけが残っていて 今もこうして空っぽな言葉を書いている そういった空虚さで この文を読む方のお時間を 頂戴してしまうことは 心苦しいことなのだけど …

海洋性の昆虫について(「深海キリギリス」推敲ノート)

生命は海から生まれた。 動物も植物も。 海から生まれた生き物たちは進化の過程で陸上に上がり、再び海に帰ったものもいる。 ウミヘビやウミガメなどの爬虫類。 クジラやイルカなどの哺乳類。 そのようにして海には沢山の生き物が暮らしている。 だが海には…

第三の選択肢(短編小説殺人するか心中するか其れが問題だ跋文)

選択肢があるということ。 昼食を食べようと食堂に入った。 ランチを注文しようとするとAランチとBランチがあるようだ。 AとB、どちらにしようかと迷う。 AとBのどちらかで迷っている人は気付いていないが本当は選択肢はもっと沢山ある。 ランチ以外のメニ…

細胞膜に身を包むということ(現代詩エンベローブ跋文)

ウイルスはタンパク質から作られた膜を持つエンベロープウイルスと、膜を持たないノンエンベロープウイルスがいる。 アルコールはエンベロープタイプの皮膜を溶かすので不活性化に効果があり、ノンエンベロープのウイルスには影響を与えないと言われる。 ノ…

恐怖についての雑感(伝承異聞 自動車跋文)

怪談を読みながら、一体恐怖の正体はなんだろうと考える。 例えば一人で車に乗っていて、ふと気付くと助手席に誰か乗っている。そんな目にあえば怖いことだろう。 これは何処からが怖いんだろう? 車の運転は怖くない。 助手席に見知らぬ「物」があっても多…

短編小説「ルーム」作品解説

短編小説「ルーム」を読まれた方は意味が分かりくくてモヤモヤするかと思いますので、ネタバレを書きます。 全くもって蛇足です。 書く人が解釈を読者に預けられずに、自ら冗長に語ることって良くないことと思いますが、 この小説を読む人は世界中で10人いる…

猫と翼について(猫だって翼があれば飛べる跋文)

猫と翼について 翼のある猫の写真を見たことがある。およそ飛べそうな翼ではなかったが。 もしかしたらフェイク写真だったかもしれない。 黒い猫だった。 そう言えば「虎に翼」なんて諺もあった。 意味合いは「強くなり過ぎる」。 虎のために翼を作ることな…

私性と俳句(俳句日記「初詣」跋文)

「初詣 僕たちは同じものを見ている」 「私」が詠まれる俳句はあまりないように思われる。 (冷たい)などの感覚や(うれし)などの感情は詠まれる。 だが、私や僕など一人称を使う俳句はない。 俳句の視点がそもそも「私」を中心に展開しているからで、それ…

カッパドキア(短編小説 岩窟の村跋文)

穴居人たちがカッパドキアに暮らしていた。穴居人などと呼べば如何にも非文明的な響きだが、今やカッパドキアの穴居生活はインフラが整備されて現代的なモダン・ライフである。 カッパドキアは砂岩の織りなす地形で、長い年月をかけて風が岩を削り奇岩が目立…

人を愛するということ(愛を与ふるロボット跋文)

僕には人を愛するという感覚が欠落している、気がする。 他人に興味がない、とも言える。 その癖、自分は愛されたいと願っている。 愛というものは恐らく相互のものなので、多少なりとも人を愛することをしなければ、自分が愛される筈もないので、この性格に…

死者との邂逅(夜のプールと古代生物 跋文)

死んだ祖父に会った時、思ったよりも活き活きしていて僕は「なんだ」と間の抜けた感想を持った。「なんだ」が何を意味するのか、世の中のモラルに照らし合わせて説明できる自信がないので詳細は割愛する。 ともあれ病院で死亡診断の済んだ死体に僕は面会した…

真夜中の古代生物(博物館にて 跋文)

薄暗い博物館にライティングされた古代生物の骨格標本に僕はわくわくとした興奮を禁じ得ない。 子供の頃の冒険心を思い出しているのかもしれない。 小さな頃は毎日が冒険だった。 知らない道を歩き、知らない場所へたどり着き人先未踏の秘境を踏破したことの…

絵のない絵本「魚の化物」跋文

テーマは相互扶助です。 年を取った登場人物たちが助け合いながらそれぞれの持ち分を活かし英雄に変わっていきます。活躍できるできないは時の運。次の機会には大活躍するかもしれませんよ。 絵のない絵本「魚の化物」|murasaki_kairo|note(ノート)https…