ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

クレオパトラの夢 バド・パウエルと高瀬アキ

ピアノとウッドベース、ドラムのトリオ。なんてスリリングな編成だろう。

バド・パウエルクレオパトラの夢に因んだ短編小説を書くにあたって、クレジットを確認した時の感想だ。

だってスモークが立ち込める薄暗いバーのステージにピアノとウッドベースとドラムしかない。

ピアノはバド・パウエル、ベースはポール・チェンバース、ドラムはアート・テイラーの三人。

彼らがバックライトに照らされてシルエットになっている。

そんなスチール写真がもし残っていたとしたら完璧な構図にきっと言葉をなくす。

緊張と興奮が伝わってくる。

其処には無駄が全くないから。

 


Cleopatra's Dream

 

クレオパトラの夢はかつてのジャズブームでも一世を博したナンバーだ。

時々CMでも使われている。

口ずさむことができるほどメロディがしっかりしている。曲調がオリエンタルで蠱惑的。

誰だって好きだ、こんな曲。愛してる。

 

最近、「Aki Takase」の「Cleopatra's Dream」を聴いた。

素晴らしかった。

 

バド・パウエルクレオパトラの夢を聴くと、まずバドのピアノに心が奪われる。

他の二人はリズムだからね。

 

だからクレオパトラの夢はピアノのための曲なんだろうという固定観念があった。

高瀬アキもピアノの人間なのでバドのようにプレイするのかと思っていたら、

 

全然

全く

 

違った。

驚いた。

 

ピアノはベースを刻むだけで、あのスインギンなメロディはペットが奏でるのだ。

トランペットの演奏はRudi Mahal。

ペットがあの早急なメロディを奏でられるのか?

そんな疑問が湧くでしょう。

 

ギリギリできてる!

 

時々声(音)が裏返る。

あー、良い!

ジャズってこういう生っぽいものだよね。

最近ローリー寺西とか聴いてたからすっかり忘れてた(笑)。

 

このデュオは

クールスタイルで

音と音に空隙が開く。

その空隙を余韻が埋めている。

 

バドのクレオパトラの夢がコテコテのポップアートだとすると高瀬アキクレオパトラ水墨画だ。いや、寧ろ書道だ。

 

真っ白いキャンパスを見ると、ついすべてを色で埋め尽くそうとする癖が我々にはあるけれど、その真っ白いキャンパスに絵を描けなんて誰が言ったんだ。

書道じゃ駄目なのか!?

 

そんな挑発的な作品だった。

 

↓これ。

 

Evergreen

Evergreen

 

 

 (You Tubeでは見つからなかった!あと廃盤になってる、これ。)

 クレオパトラの夢はバド・パウエルのオリジナルが凄すぎて、誰がプレイしたって劣る。この曲が名曲でありながらもスタンダード化しないのは、これが原因だな、きっと。初めて、原曲に比肩するプレイを聴いた、気がする。

 

 キャンパスに描くのは

絵だって

書道だって

はたまた日記だって数式だって

或いは

ラブレターだって良いんだぜ、

という話。

 

 

短編小説「クレオパトラの夢」|ムラサキ|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/n/n807d318796ed