ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

わたしのことば(現代詩「腹が減る」跋文)

私の中は空っぽで

才能もないし興趣もないし

愛嬌もないし

それに加えて主張もない

 

物を書くという習性だけが残っていて

今もこうして空っぽな言葉を書いている

 

そういった空虚さで

この文を読む方のお時間を

頂戴してしまうことは

心苦しいことなのだけど

そういった空虚さを

分かち合える方が現れないかと

心待ちにしている自分もいる

 

少年がガラスの瓶にコルクで栓をして

その中には手紙とキャラメルが入っている

 

海岸に立った少年は

なるべく遠くにそのボトルを投げるのだ

 

ボトルは遠い外国の海岸に流れ着いて

それを拾った異国の人が

返信を書いてくれるかもしれない

 

言葉は果のない旅をして

いつか誰かの元に届くかもしれない

 

最近の私は

自分のことを日記のように

詩に起こすようになった

私の言葉で

世界が変わるとも思わないし

誰かが変わるとも思えない

 

私にできるのはせいぜい

私をさらけ出して

笑ってもらったり

反面教師にしてもらったり

することくらいだ

 

私は先日 腹が減ったので

腹が減ったという詩を書いた

 

それが私という人間なので

読まれた方は

何処かにいる私という人間が

腹が減っているんだなあと

思って下さい

 

その時にもし

あなたがお腹が減っていれば

わたしも!

とお手紙下されば幸いです

 

(「わたしのことば」村崎懐炉

 

 

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現代詩「腹が減る」|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/n/nc47aac12c922