ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

海洋性の昆虫について(「深海キリギリス」推敲ノート)

生命は海から生まれた。

動物も植物も。

 

海から生まれた生き物たちは進化の過程で陸上に上がり、再び海に帰ったものもいる。

ウミヘビやウミガメなどの爬虫類。

クジラやイルカなどの哺乳類。

 

そのようにして海には沢山の生き物が暮らしている。

だが海には両生類はいない。これは意外だ。両生類といえばカエルだ。海カエルのような生き物はいない。

昆虫もいない。

これはもっと意外だ。

 

人間は地球を自分たちのものだと考えているが、昆虫の方が遥かに個体数が多い。

世界中のアリと人類の個体数を比べてもアリの方が多そうだ。

そして広範囲に暮らしている。

見方によれば昆虫たちが主役の惑星に人間たちが好き放題に間借りしているようにも思われる。

 

にも関わらず。

昆虫がこれだけの個体数や多様性を誇るにも関わらず海に昆虫がいないということは実に意外だ。

蟹などの節足動物はいる。だが、それらは元々海にいた生き物で陸上から帰った訳ではない。

 

陸から海に帰った、とか。昆虫と節足動物の違いなんて人間の勝手な分類学とセンチメンタリズムでしかないかもしれないが、僕はそこに神秘を感じて止まない。

 

昆虫が海に帰ることができなかったことの学術的な考察は専門家先生に任せるとして、センチメンタリストの僕としては昆虫が海に帰っていたらどのような進化を遂げたのかというロマンチックな夢想に思いを馳せたい。

 

海洋性の蝶々が海流に身を任せて花弁のように舞い散る姿を夢見たい。

 

 

 

短編小説「深海と作成中の短編小説」|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/n/naf937ba19e4f