ムラサキの文学日記

短編小説、現代詩、俳句、短歌、随筆

真夜中の古代生物(博物館にて 跋文)

薄暗い博物館にライティングされた古代生物の骨格標本に僕はわくわくとした興奮を禁じ得ない。

子供の頃の冒険心を思い出しているのかもしれない。

 

小さな頃は毎日が冒険だった。

知らない道を歩き、知らない場所へたどり着き人先未踏の秘境を踏破したことのマーキングをした。

 

博物館もしかり。

薄暗い博物館の大きな階段の下は鯉を泳がせるための石畳の水槽になっていて、子供であった僕はその水槽に鯉以上の大物が隠れて住んでいるに違いないと確信していた。

 

それはきっとプロトケラトプスのような子熊のように小さな恐竜たちで夜になると水槽に水を飲みにくるに違いない。

きっと今は物陰に潜んで夜を待っているのだろう。

 

それが僕が子供の頃に暮らしていた世界である。

 

僕は大人になって幻想の国を出国して経済の世界で暮らしているが、ふとした時に子供の頃に暮らした故郷を思い出す。そんなときに僕は古代生物の図鑑を開いてお気に入りの恐竜に付箋を貼るのだ。

 

 
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短編小説「博物館にて」|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/n/n5d8d80c41b30